影の皇妃
原作タイトル(韓国):그림자 황비
英語タイトル:Shadow Queen
作品紹介
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【ピッコマ】影の皇妃【ネタバレ】
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原作小説のあらすじ
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原作小説|影の皇妃|ネタバレ・あらすじ3
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ノブレス通りの事業が思うようにうまくいかず苛立つベロニカのもとにボローニ伯爵、ノートン子爵、ファン男爵がやってきた。3人はベロニカ直筆の署名が入った契約書を持ってノブレス事業の収益分配について要求したが、何も知らないベロニカは激怒、彼らを追い返した。そしてエレナの仕業に怒り狂いソファーに何度もハサミを突き刺した。
ベロニカの無責任な態度に失望した3人は、投資金額の返還を求め貴族達と連携して上納金の支払いを拒否する計画を立てた。
レンが死んだという噂が流れると、予想通りフランツェ大公はバスタージュ家の要職に就いている者たちを買収し始めた。スペンサー子爵の行方は依然として不明のままだった。
文化勲章授与式の日、シアンが直々に迎えに来た。授与式の後、皇帝リチャードはエレナだけを呼び出しある計画を話した。エレナは衝撃を受けたが、自分の願いを受け入れてもらうことを条件にリチャードの計画通りに動くことを約束した。エレナの願いは皇室の秘密に関わることだったのでリチャードは驚いた。
リチャードはエレナにあるブローチを渡した。それは代々皇室に受け継がれているブローチで、回帰前はセシリア皇后が身に着けていたものだった。「あなたの功績を称え、今後も皇室の灯となってもらいたいという気持ちで贈る。」リチャードはそれとなく本音を仄めかした。「私が頂けるものではありません。」以前であれば喜んで受け取ったが、今では重荷だった。しかしリチャードが譲らなかったため、エレナは仕方なく受け取ることにした。
ベロニカは再びフランツェ大公の執務室に押し掛けた。大公家の財政は、貴族達の上納金が途絶えたせいで急激に悪化していた。そのため政治的な立場と財力そして武力も盤石なバスタージュ家を手に入れる準備を着々と進めていた。その話を聞いたベロニカの表情が明るくなった。彼女にとってレンは目障りな存在だった。
エレナは大公家との最終決戦に臨むため、ヒューレルバードに傭兵を集めるよう指示した。その数は50。一般の騎士団の2倍を超える人数だった。
スペンサー子爵はバスタージュ家に戻ってきていた。すでに邸宅は大公家に支配されていたため、メルは密かに潜入して子爵のもとを訪れたが、すでに廃人同然となっていた。「レンは死んだ。バスタージュ家は大公家に捧げる・・・」子爵は拷問によって洗脳され精神が崩壊し、うつろな目つきでオウムのように繰り返すだけだった。
看病の甲斐もあり、レンはついに目を覚ました。エレナは抱きつき、涙を流して喜んだ。
バスタージュ家に潜入したメルが、レンに子爵の状態を報告した。レンは父親に会いに行くことにした。まだ体調が万全でなかったためエレナは必死で引き留めたが、レンの意思は固かった。
日の当たらない陰鬱な鉄格子の前で、アティールは見る影もなく薄汚れたリアブリックと対面していた。彼女は独り言をつぶやきニヤニヤ笑っていた。アティールが状況を説明して助言を求めたが、無責任に答えるだけだった。「大公が動いた以上、おまえにできることは何もない。」リアブリックが意味ありげに笑った。
レンは、メルの助けを借りてバスタージュ家に潜入しスペンサー子爵と対面した。子爵は焦点が定まらず虚ろな表情のままだったが、レンを見ると涙を流した。レンが怒りを抑えて手を握り父を呼んだが、そのまま痙攣を起こし目の前で息を引き取った。新興貴族を率いて活躍した父の寂しい最後だった。「あなたが望んでいたフランツェ大公の首を捧げます」レンは振り返らず屋敷を後にした。
エレナは心配でずっと帰りを待っていた。戻ったレンは彼女の肩を借り嗚咽を漏らした。エレナは慰めの言葉が見つからず、ただ彼の痛みが和らぐのを願い立ち尽くすだけだった。
カリフとエミリオは、傭兵を集めたエレナの意図を図りかねていた。エレナは皇帝との計画を説明した。山賊に偽装させた傭兵たちを首都近くで暴れさせ、意図的にフランツェ大公が動く名分を与えて誘い出す作戦だった。
スペンサー子爵の葬儀が盛大に執り行われ、エレナはシアンとともに参列した。スペンサー子爵とレンの死は、それまで大きな勢力となっていた新興貴族たちに打撃を与えた。
葬儀後、エレナはシアンとレンに最終計画について話した。それは皇帝リチャードの犠牲に上に成り立つ作戦だったが、エレナはそれを望んでいなかった。成功のためにはシアンとレンの協力が不可欠だった。
計画が動き始めた。
山賊に偽装したヒューレルバード率いる傭兵たちは、首都北部で活動を始め、カストル商団の襲撃などで知名度を上げていった。
皇居では、バスタージュ家の相続をめぐる会議が開かれていた。フランツェ大公への相続を強く迫る貴族たちに対しリチャードは頑なに拒否する姿勢を貫いた。「半年以内にレンの生死の確認ができなければ相続を認める」フランツェ大公は従うしかなかった。
リチャードは、首都近くに出没する山賊達の討伐について貴族たちに意見を求め討伐隊を編成するよう命じたが、被害を恐れた貴族たちはみな消極的だった。
「皇室の威厳を示すために皇居近衛隊を派遣して討伐するのが妥当だと思われます。」カンヌ子爵の意見に他の貴族達も同調した。リチャードは苦い顔を見せたが、これこそ皇帝の思惑通りだった。あとはフランツェ大公が餌に食いつくのを待つだけだった。
「皇帝を変えなければならない・・」会議後、邸宅に戻り数時間考え込んでいたフランツェ大公は、アティールを呼んで騎士たちの召集を命じた。大公はベロニカに避難しているよう命じたが、彼女は同行することを強く希望した。ベロニカは自分の手で『L』を殺しサロンを手に入れようと考えていた。大公は悩んだが、彼女の同行を認めた。彼は勝利を確信していた。
シアンを団長とする討伐遠征隊が編成された。エレナはカリフとエミリオに安全のため首都をしばらく離れるよう指示したが、2人はエレナと共に戦うことを決意した。
エレナのもとでリハビリを続けていたレンは、バスタージュ家を奪還するためにメルと共にサロンを出て行った。レンがいなくなった部屋でエレナは寂しさを感じていた。
リチャードはフローレンス皇后とお茶を飲んでいた。政略結婚で子供も授かることができなかった皇后との関係は冷え切っていた。途中で席を立つ皇后にリチャードが言った。「今日はありがとう」突然他人行儀に挨拶するリチャードに眉をひそめたが、そのまま庭園を離れた。後ろ姿を見つめるリチャードが呟いた「いままで悪かった。最後まで大きな負担をかけてしまったな・・」
シアン率いる皇居近衛隊が出征した。エレナは密かに彼を見送った。彼女の役目は普段通りサロンを運営し守ることだった。
シアンたちは北部の山に向かい、山賊に偽装したヒューレルバード率いる傭兵達と密かに合流した。そこでシアンたちは平民服に着替え、傭兵たちと入れ替わった。
シアンたちは用意されていた馬や荷馬車に乗って山を下りた。近衛隊の制服に着替えたヒューレルバードたちは、そのまま山中にキャンプを張った。近衛隊が山に留まっていることを大公家に信じさせるためだった。
討伐に向かった皇居近衛隊が依然山中に留まっているとの報告を受けたフランツェ大公は思案していた。皇居に残った近衛隊は少数で、『L』のサロンでは盛大な舞踏会が開かれていた。ベロニカはチャンスとばかりに浮かれていたが、大公は決して油断をしなかった。
「どうも誰かがけしかけている気がするが・・・」しかし彼はそんな考えを打ち消した。失敗するはずがなかった。
大公はついに決断を下し、100名近くの騎士達とともに闇夜に乗じて皇居へ進軍した。
大公の動きを監視していたシアンたちは、大公家に向かった。「皇居を明け渡し大公家を占拠する」これがエレナの計画だった。
舞踏会が開かれているサロンでは、エレナがマジェスティからの報告のメモに目を通していた。彼女は司令塔としてサロンから今回の計画を統制していた。その時、伝書鳩から受け取ったメモに激しく動揺した。「私と約束してくださったのに・・」回帰前、リチャードはエレナにとっては唯一優しく接してくれる義父だった。新しい帝国の姿を見せたかったのに・・・彼の選択が恨めしかった。
皇居を占拠したフランツェ大公を前にしてもリチャードは平然としていた。秘密通路を使って脱出することをエレナと約束していたが、逃げ出すつもりはなかった。フランツェ大公は、皇帝を確保して強制的に文書に押印させ、名実ともにバスタージュ家を相続しようとしていた。しかし、リチャードは自ら剣を取り騎士たちが制する間もなく目の前で自害、勝者の笑みを浮かべて崩れ落ちた。
大公は深刻な事態に陥った。慌てて玉璽を探すよう騎士たちに命じたが、リチャードが事前に隠していたために見つけることができなかった。貴族達の反発を招かないよう、どうしても正規の手続きを経て相続する必要があったため、仕方なくリチャードの拇印を押しバスタージュ家に向かおうとした。
その時、大公家が皇居近衛隊に占拠されたとの知らせを受け取った。「山中にいたはずなのにどうして・・・」大公は口をつぐんだまましばらく沈黙した。しかし、しばらくして声を上げて笑い出した。ベロニカは同行していたため人質にはならず、大公家の血筋はまだ健在だった。大公は計画どおりバスタージュ家を掌握してそこを臨時の本拠地とすることにした。
ベロニカが大公と共に皇居に向かったという報告にエレナはため息を漏らした。大公邸でベロニカを人質に取る作戦は失敗したが、皇帝が死んだことは大公側にも大きなリスクだった。
次々と伝書鳩の報告が来た「大公、バスタージュ家に移動中」「レン、バスタージュ家を掌握」「リンドン伯爵、騎士団と共にバスタージュ家へ移動中」「ヒューレルバード、首都近くまで移動」
いくつか変数はあったが、概ね計画通りに進んでいた。しかし、次の報告に青ざめた。「リンドン伯爵、ホイット侯爵率いる騎士団と戦闘中、劣勢」
バッキンガム侯爵家の介入は予想外だった。リンドン伯爵の騎士団は、フランツェ大公を捕らえる切り札だった。完全な計画の失敗にエレナは唇をかんだ。リンドン伯爵が倒されれば全てが台無しだった。
エレナは咄嗟に計画を変更し、バスタージュ家に向かうヒューレルバードをリンドン伯爵の救援に行かせることにした。マジェスティを通じてシアンとレンにヒューレルバードたちの合流が遅れることを伝えた。シアンたちが持ちこたえることを信じるしかなかった。
エレナは護衛のベルと共に移動中のヒューレルバードと合流し、リンドン伯爵の救援を要請した。
バスタージュ家に到着した大公とベロニカ達は、その異様な光景に当惑していた。屋敷の前にはバスタージュ家の副師団長であるペリン卿をはじめ20人が手足を縛られ膝をついていた。大公家と通じている者たちだった。すると邸内から出てきた覆面の男が次々と首を刎ねていった。
「お前らも同様に死刑だ」覆面を脱ぎ捨てたレンが吐き捨てるように言った。
大公家の騎士団たちとの戦力の差は大きかったが、レンの目つきは猛獣のように鋭かった。第2騎士団長のジェームズがレンを睨みつけて剣を抜いた時、別の集団が奇襲攻撃を仕掛けてきた。シアンたち皇居近衛隊だった。
ついに大公家との戦闘が始まった。
シアンと合流する予定だったリンドン伯爵たちは、バッキンガム家の襲撃に苦戦していた。圧倒的な戦力の前になす術がなかった。その時、ヒューレルバード率いる集団がやってきた。救援の知らせもリンドン伯爵の顔はこわばったままだった。10人も満たない応援ではこの状況を変えることはできなかった。
リンドン伯爵の制止も聞かず、ヒューレルバードは全速力のまま敵陣に突っ込み、あっという間にホイット公爵の首を討ち取った。突然の出来事にみな驚愕の声を上げた。
ヒューレルバードは戦局を変えるために最初から大将の首を狙っていた。依然、敵陣に囲まれていたが怯むことなく暴れまわり、騎士団長の首も討ち取った。恐れをなした残りの騎士たちは戦意喪失し、リンドン伯爵の呼びかけに応じて投降した。
そこにエレナが到着。彼女は今回の計画失敗を伯爵に謝罪した。「お嬢様、命令通り伯爵をお救いしました。」「お疲れさまです。」ヒューレルバードにとってはその一言で十分だった。
休む間もなく、エレナたちは急いでバスタージュ家に向かった。
バスタージュ家では戦力の差があるにもかかわらず、レンとシアンの圧倒的な力の前に大公家の騎士たちは苦戦していた。見ていたベロニカはその不甲斐なさに不愉快で顔を歪めていた。レンは隙をついてベロニカに切りかかったがフランツェ大公の剣がそれを防いだ。
大公は淡々としていた。大公と剣を交えたレンはその圧倒的な強さに緊張した。今まで誰にも負ける気がしなかったが、初めて恐怖を感じた。
レンとシアンはジェームズ達を突破しフランツェ大公に斬りかかった。見事な連携攻撃だったが、大公は難なくそれをはねのけた。大公の剣術は驚異的だった。「お前たちに私を倒すことはできない」今まで守備に徹していた大公の空気が変わった。ただならぬ殺気に二人は身構えた。
そこにリンドン伯爵たちが合流した。「ヒューレルバードか?あの落ちこぼれめ!」大公家の騎士たちが裏切り者に怒りの眼差しを向けた。しかしヒューレルバードは何のためらいもなく前を塞ぐ者たちを斬り倒していった。彼にとってはエレナの命令が全てだった。
驚異的な騎馬術で中央を突破したヒューレルバードはシアン・レンと戦う大公の前で止まった。彼の後ろにはエレナがいた。大公と向き合ったエレナはようやくこの時が来たのだと実感し、喜びが込み上げてきた。ベロニカはそんなエレナをみて不敵な笑みを浮かべた。
最後の戦いが始まった。
シアンとレンは大公を挟み撃ちにして攻撃するが、大公はそれをなんなくかわした。「メイが暗殺に失敗するわけだ・・・」大公の強さはエレナの常識をはるかに超えていた。
ヒューレルバードは第2騎士団長ジェームズを相手にしていた。ジェームズは一介の新人騎士でしかなかったヒューレルバードの圧倒的な強さに当惑していた。そしてヒューレルバードの猛攻に耐え切れず心臓を貫かれて倒れた。
それを見た大公は固まった。ただの平民騎士に騎士団長があっけなく殺されてしまった。「リアブリックがやられるわけだ・・」自分でも気づかなかったヒューレルバードの実力に気づいていたエレナに改めて驚いていた。
ヒューレルバードが加わると一気に形勢が逆転した。大公家の騎士が加勢するも、この3人には歯が立たなかった。大公の顔には焦りが見え、ベロニカは苛立ちで爪をかみしめた。
そしてついに3人の剣がフランツェ大公の体を貫いた。「ああ、お父さま!」ベロニカが叫ぶと同時に大公の体から血が噴き出した。死を受け入れることができない目つきでエレナを睨み、そのまま倒れ絶命した。エレナは彼の息が絶えるまで目を離さなかった。一時代を築いた英雄の死はあまりにみすぼらしかった。
現実を受け入れられないベロニカが残りの騎士たちに戦うよう命令するが、騎士たちは戦意喪失し投降した。最後まで悪あがきのベロニカを見てレンは嘲笑った。怒りに震えたベロニカがエレナに襲い掛かろうとしたが、レンの手刀で気絶した。
フリードリヒ大公家とバッキンガム侯爵家が謀反を起こし、シアンが制圧したというニュースは帝国中に衝撃を与えた。権力が皇室に移ったことに貴族たちは驚愕した。また、レンが生きていてシアンとともに大公家を倒したというニュースは、新興貴族としての地位を固めることにもつながった。
ベロニカは皇居の地下牢に投獄された。皇帝リチャードの葬儀後、処刑される予定となっていた。
『L』を迎えに来た皇室の儀装馬車がサロンに到着した。人々は『L』が次期皇后になるのではないかと噂した。
エレナは、ヒューレルバードに褒章を与えるようお願いした。「帝国の三剣」の一人と言われた彼が、自分のせいで裏切り者という不名誉を被ってしまったことを後悔していた。
シアンは、爵位と領地を与え、帝国の騎士として皇居近衛隊の団長を任せようとしていることを話した。エレナはこれで名誉回復ができると喜んだ。
レンは首都内にある貴族専用墓地を訪れた。そしてスペンサー子爵の墓前で、手に持っていた袋を捧げた。フランツェ大公の首だった。今回の件で伯爵位を受け領地も与えられたが、彼にとっては意味がなかった。父の墓石をじっと見下ろすレンの目には寂しさがこもっていた。「ちょっと休みます。生きる意味を考えてみます。これからどうやって生きていくか・・・」墓地を離れたレンは足を止めて空を見上げた。「生きていく意味か・・」そしてふと笑った。「もう見つけたかもしれないな。」
馬車の中で、エレナはヒューレルバードに嬉しい知らせを届けたが、彼は全て断った。「これからもずっとお嬢様にお仕えしたいです」エレナは深くため息をついた。回帰前のように栄光を取り戻してあげようとしたが、彼は頑なに拒んだ。彼の気持ちは有難かったが、同時にとても申し訳ない気分だった。
馬車はリアブリックが投獄されている邸宅に到着した。エレナが目にしたのは、以前のような端正な姿はなく惨めな格好をした彼女だった。リアブリックがかすれた声で言った「嘲笑うために来たの?」「はい、そうしようと思って来ましたが・・・壊れたみたいですね」リアブリックはわめき散らしたが、エレナは無視して背を向けた。もう相手にする価値もない人間だった。優越感を感じたり復讐の喜びを感じる気持ちも起きなかった。そんなエレナの態度に、リアブリックを支えていた最後の自尊心が踏みにじられた。彼女は衝動的に激しく壁に頭を打ち付けた。額は陥没し不気味に微笑んだ。「お前の相手は私だ」と言わんばかりの目を向けそのまま絶命した。「あなたらしいですね。さようなら、リーブ」
エレナは北部に住む両親のところに向かった。感動の再会を果たし、両親を首都に連れて帰った。エレナたちの到着の知らせを受けたシアンは、両親とともに皇居へ招待した。
皇居に招かれたエレナは皇后に呼ばれた。リチャードはフランツェ大公の謀反に備え、玉璽を皇后に預けていた。皇后は、シアンの戴冠式で必要なのでエレナから渡すようにと頼んだが、エレナは皇后自身が直接渡すよう進言した。「なぜ陛下があなたにブローチを渡したかわかるような気がします」氷のように冷たかった表情が少し和らいだように見えた。
エレナは皇居地下牢を訪れた。ベロニカは、鉄格子の中から今に飛びかかろうと手足を出しわめき散らした。エレナは嘲笑した。「大丈夫みたいですね、リアブリックみたいに壊れたらどうしようかと心配でしたが・・・」「もっとあがいて叫びなさい。希望も失わないで、死ぬ瞬間まで。そうしてこそ楽しめるじゃないですか。」「ここを開けろ!殺してやる」ベロニカはさらに激しく暴れたが、そんな姿にエレナの笑みがさらに濃くなった。「一ついいことを教えてあげますよ。もうすぐ民衆の前で処刑されることになるでしょう。」
これまで激しく暴れていたベロニカが肩を震わせた。エレナの言葉は彼女の小さな希望すら粉々に打ち砕いた。「だから誰かがこの扉を開ける時を待っていてください。その時があなたの最後の日だから。」エレナは笑みを浮かべて背を向けた。ベロニカの怒りの悲鳴が地下牢内に響いたが、エレナは振り向かずそこを離れた。
ベロニカ処刑の当日、準備を終えたエレアのもとにレンがやってきた。首都に戻って以来会うことができなかったのでエレナは喜んだ。レンはただ顔を見に来ただけだった。「狂人の死に興味ないから」処刑には立ち会わないと言うレンの言葉にエレナは大笑いした。「今度食事でもしましょう。伯爵家に押しかけますよ。」「いつでも歓迎するよ」
謀反に加担した者たちはすでに全員処刑されていた。逆賊の最後を見ようと刑場に向かう人々でごった返していた。ヒューレルバードのエスコートで馬車を降りるエレナに人々に視線が釘付けになった。『L』の名声はすでに帝国中に轟いていた。シアンは自分の隣にエレナを座らせた。
近衛隊に連れて来られたベロニカは、やせ衰え、その目は恐怖で揺れていた。彼女の悪事を知り興奮した一部の民衆が石を投げつけ、ベロニカの頭や肩を打った。ベロニカは悲鳴を上げたがその眼は殺気に満ちていた。
暴れるベロニカを近衛兵が押さえつけたが、彼女はエレナに悪態をついた。エレナはただ無表情に見下ろすだけで返事もしなかった。
リンドン伯爵がベロニカの罪状を読み上げた。「執行せよ!」シアンの命令でベロニカは処刑台に固定された。なおも叫び続けるベロニカだったが、そのあがきもそこまでだった。ロープが切られると鋭い刃が彼女の首に落ち、その瞬間彼女の頭は処刑台の下に転がった。
その残忍な過程をエレナは最後まで見守った。
「全部終わった・・」涙もなく感動もなかった。前世の呪縛から解放され、これからの人生を生きることに感謝したがその重みも十分感じていた。
二度目の人生を力強く生きていくつもりだ。最後に振り返った時に後悔をしないように・・<完>
外伝1は回帰前の話です。シアンがなぜベロニカと関係を持つことになったのか、そしてエレナが殺された後どうなったのか・・・エレナとシアンの悲恋の物語です。外伝2は本編その後のストーリーです。エレナは誰を選ぶのか?近いうちにまとめます~
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原作小説|影の皇妃|あらすじ・外伝1
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